はじめに


雪形(ゆきがた)って知ってますか?

  春から夏にかけての雪融けの時期に、山の斜面に現れる様々な残雪模様を「雪形(ゆきがた)」と言います。これは、昔から農事暦として農作業の開始や豊凶を知る目安として利用されてきました。しかし、近年の農業の進歩や気象観測の充実などにより農事暦としての意味はなくなり、わずかの有名な雪形を除いて、ほとんどの雪形は忘れさられようとしています。雪形は外国にもわずかに存在することが”(全世界に発信しようと名付けられた)国際雪形研究会”の調査で明らかになってきたましが、雪形は日本特有の文化の可能性があります。その意味で、「雪形」は世界に誇る日本の文化遺産といえるかもしれません。
 研究としての雪形は、従来民俗学的な分野でのみ行われていたが、国際雪形研究会の活動を通して、雪形には、地球温暖化などの気候指標として、地滑りなどの地表変動の指標として、また山岳部の積雪分布の指標として等の科学的な意味があることがわかってきました。さらに、雪国の景観や観光資源として、子供たちの教育や自然観察の素材としての意義があり、雪の無い地方の人々や外国の人々の関心を引きつける可能性を大いに秘めています。
 この様な雪形に興味を持ち様々な活動をしているのが、「国際雪形研究会」です。その目的は、自然環境とのふれあいの中で、現在消滅寸前の日本が世界に誇る文化遺産である「雪形」を、将来への財産として整理分類するとともに、雪国の人のみならず雪のない地方や全世界に発信し、雪形文化を発展させていくことです。そして、この国際雪形研究会の活動を活性化させることが、このホームページの目的なのです。
 さあ、当ホームページをいらっしゃった皆さん、そんなに難しく考える必要はありません。この雪形が見直されたのはまだ最近のことなのです。ですから、今興味を持ちはじめた人でもすぐに最前線の”雪形研究家”になれます。


雪形講座(入門編)
「雪形って知ってますか?」
[雪氷57巻4号(1995)ビジュアル雪氷豆辞典より]


八海山の「豆まき入道」と積雪分布


 新潟県六日町では、八海山の入道岳に「豆まき入道」の雪形の出る 頃が、豆まきの適期と言い伝えられてきた。このような雪形の農事暦 としての利用は、冬の最大積雪深と春から夏にかけての気温等の推移 によって雪形の出現時期が変わることを利用したもので、雪国の農民 の素晴らしい知恵と言える。これから逆に発想し、雪形の消滅までの 形の変化とその間の気温を観察すると、気温と融雪量の関係などによ り、水資源の有効利用に欠かせない山地の最大積雪深の分布が推定で きる。場所により積雪深の著しい違いは、夏には植生の違いとして観 察される。(森林総研十日町試験地 遠藤八十一)

入り組んだ雪形
(マメマキドリ、篭形、牛形、粟まき婆、ノテワラ)

 雪形には、黒い地肌の中に残雪が白く図として浮き出るポジ型と、 白い残雪を背景として黒い地肌が図として現れるネガ型がある。新潟 平野の前面にそびえる粟ケ岳(1293m)の西面には、ネガ、ポジが入 り組んだ見事な5種類の雪形が5月に現れる。写真の一番上がポジ型 のマメマキドリ(1)で、鳩が豆を啄んでいるように見える。その下 がネガ型の篭形(2)、その下にポジ型で闘牛のように角をかざした 牛形(3)がある。牛形の右は、ネガ型の中腰で粟を蒔いている粟ま き婆(4)で、蒔いた粟は牛形の胴体の黒班となって現れている。粟 まき婆の右は、ポジ型で藁を束ねたノテワラ(5)と呼ばれる雪形で ある。これらは、まるでロールシャッハテストのようで、自然の造形 美と先人の見立ての鋭さには驚かされる。(新潟大災害研 和泉薫)


気候センサーとしての雪形
---鋸山の「川の字」---

 新潟県長岡市にある鋸山(標高765m)の北西斜面には、漢字の「川」 の形を成すポジタイプの雪形が現れる。写真は1995年4月24日に長岡 市鉢伏町から撮影した「川の字」である。図に示した「川の字」の形 状変化から、1995年の出現期間は4月下旬から5月上旬であったこと がわかる。長岡市の4年間の最大積雪水量と、最大積雪に達した日か ら「川の字」の出現日までの積算暖度との関係を用いて「川の字」の 出現日を推定したところ、過去30年では3月下旬から5月上旬の間で 変動しており、年により40日以上も異なる。また、1989年以降は特に 出現日の早い年が多発しているようである。(長岡雪氷防災研 河島克久)


清水の「日輪」の地形的成因

 この雪形は、塩沢町清水の巻機山南方西向き斜面にあり、伝承のあ る雪形としては珍しく、円形の単純な幾何模様のポジ型雪形である (写真左、河島克久氏撮影)。雪形形成の支配的要因は地形であるの で、航空写真の判読と数値標高モデルによる地形解析を行った結果、 この雪形周辺は地滑り地であった(写真右)。したがって、地滑りに よって生じた勾配45度に達する急な滑落崖から雪崩れた積雪が移動体 頂部の凹部に堆積し、円形のポジ型雪形が形成されたものと考えられ る。このように、雪形は地滑りなどの過去の地表変動を明瞭に可視化 する。(長岡雪氷防災研 山田 穣)


[Back] [ゆきはくHome]